家族がうつ病になったら、どのように接したら良いの?
そんな疑問にお答えします。
うつ病の家族への接し方

最初は誰しもとまどうもの
家族がうつ病になると、いままで知っていた姿と違うように見えて戸惑うことも多いです。
しかし、そういう変化は病気のせいです。病気が良くなれば、もとに戻るものなので決してその人の人格がおかしくなったわけではありません。うつ病も、その人の一部だと思って、理解を示すことでおたがいに安心感を得られます。
うつ病の家族に接する際に気をつけたいこと
否定的な対応をしない
基本的には本人の訴えに対しては否定的な対応をしないことです。
どうしても支持できないような場合は、せめて理解を示す態度が大事です。
励まさない/無理させない
うつ病の急性期などは「頑張って」などと励ますのもよくありません。
生活習慣を見直す
うつ病を患うと、睡眠のリズムが崩れることが多いです。できるだけ睡眠と覚醒のリズムを戻すために、家族も含めて生活習慣の見直しをしましょう。
また、抑うつ状態にある家族をサポートし、率先して家事や育児をするようにしましょう。ゆっくり休める環境を整えてあげることが重要です。
薬をしっかり管理する
うつ病の人は、自分が病気だという認識がないことが多いです。また、薬に対する抵抗などもあり、薬を飲まなかったり、逆に自殺を考えて大量服薬する人もいます。
場合によっては体調の記録を取る
薬には効果もありますが、副作用もあります。体調の変化の有無など、本人に聞いて代わりに記録をとっておくのも、診察のときに役立ちます。
やりたくないことは無理しない
できるだけ普段のように過ごすのがベストですが、うつ病の人は倦怠感やひどい疲れを感じて気力が低下して、何もやりたくないということが多いです。
うつ病の人を気分転換にと無理に外に連れ出すことや、「テレビでも見たら」と勧めることは、うつ病の人には苦痛になったりします。
働く人のうつ病

職場の人間関係、仕事のプレッシャー、長時間労働など、仕事をしていると様々なストレスにさらされることになります。
働いている本人はうつ病の症状が現れても、「仕事の疲れか」と思って病院を受診せずに無理を続けたりすることもあるので、周囲の人が気づくことが大切になります。
働くひとのうつ病のリスク
昇進や異動
昇進のような嬉しい出来事も、仕事の変化やプレッシャーなどからうつ病を発症するきっかけになったりします。
復職後
休職などをしたあと、復帰後に仕事の遅れを取り戻そうと頑張りすぎることで、一度は治まった症状が再発することも多くあります。
発達障害
発達障害をかかえていると、職場でのコミュニケーションがうまく行かないことが続き、それがストレスの原因となり、うつ病になるケースもあります。
注意するポイント
うつ病の症状がないか
「最近、あの人の様子がおかしいな」と思ったら、それがうつ病の症状に似ているかどうかチェックしてみましょう。
復帰後は「頑張りすぎない」
上でも書いたように、うつ病で休んだあと、遅れを取り戻そうと頑張りすぎることで、一度良くなったうつ病が再発してしまうことがあります。
復帰後は、段階的に仕事量を増やすなど、無理をしない・頑張りすぎないように注意しましょう。
女性のうつ病

女性のうつ病は、男性の2倍というデータもあるくらい、多く見られる病気です。妊娠・出産・月経などのホルモンバランスの変化や、それにともなう環境の変化が要因となり発症することが多いようです。
女性のうつ病のリスク
妊娠・出産
妊娠・出産はホルモンバランスの変化だけでなく、出産や育児への不安などからストレス要因が多くあり、うつ病になりやすい状態におかれています。
産後にマタニティブルーになった人は、そこからうつ病になることも多く、気をつける必要があります。
更年期
閉経前後の時期に訪れる更年期は、女性ホルモンのバランスが変化し、さまざまな不快な症状が現れ、それがうつ病の原因になることもあります。
月経
月経前後でのホルモンバランスの変化から、抑うつ状態になることもあります。月経が終われば元通りになることが多いですが、長く続くようであれば病院を受診しましょう。
注意するポイント
服薬は慎重に
妊娠中の服薬は胎児への影響が懸念されるために、慎重になる必要があります。医師に相談し、適切な処置をしてもらうようにしましょう。
子ども・学生のうつ病

北海道大学の調査によると、以下のようなデータが得られたそうです。
2003年に札幌市、千歳市、岩見沢市の小学1年生から中学3年生の約3300人を対象に抑うつ状態に関する調査を行いました。
(中略)
その結果、小学生7.8%、中学生22.8%が抑うつ傾向をもっていることが明らかになりました。
いいね!Hokudai うつ病は大人だけの病気じゃない? ~子どものうつ病に迫る~
子どもであってもうつ病になるリスクはとても高く、きっかけや環境によっては誰しもうつ病を発症するものであるということです。
子どものうつ病のリスク
いじめ
学校でのいじめなどは、うつ病を発症するリスクにもなります。
不登校
不登校だからといって、すぐにうつ病だとは断定できません。ただし、普段からまじめにやっていた子が、急に登校しなくなったり、休日でも元気がないような場合は、うつ病の可能性があるため、病院を受診したほうがよいでしょう。
注意するポイント
身体症状が中心になることも多い
うつ病と聞くと落ち込んだり、死にたくなったりという「心の病気」と思われがちです。しかし子どもの場合「憂うつ」な気分というのを言葉で表現するのが難しいので、初めに体の症状を訴えることが多くなります。
睡眠と食事
- 睡眠:きちんと寝られているか
- 食事:おいしく食べているか
これらは人間が生きていく上で欠かせない活動です。その活動に障害があるということは、こころと体に何らかの重大なことが起きている証拠です。
また合わせて「子どもが家で好きなことを楽しんでいるか」も大切です。特に普段と違ってイライラ感を訴えるときには注意する必要があります。
高齢者のうつ病

高齢者のうつ病は、年齢によるものと思われやすく見逃されがちです。特に認知症とのみわけは難しいため、家族や周囲の人の様子がおかしいときは認知症と決め込まず、うつ病の症状が現れていないか注意して見るようにしましょう。
高齢者のうつ病のリスク
喪失体験
高齢者のうつ病の原因の大きなものは、以下のようなものがあげられます。
- 仕事を退職した(仕事もしくは生きがいの喪失)
- 配偶者や友人と死別した(配偶者・友人の喪失)
- 子どもが自立した(子どもの喪失)
- 病気になった(健康の喪失)
これらはどれも「大切な何かを失う」という経験であり、その喪失体験がうつ病のきっかけになりやすいと考えられています。
注意するポイント
認知症と違いを見分けるのは難しい
高齢者のうつ病は、「不安感」や「やる気の喪失」という典型的なうつ病の症状だけでなく、その症状が認知症と見分けがつきにくいものもあります。
- ぼーっとする時間や、物忘れが増えた
- 意欲が低下している、急に痩せた
- 夜眠れないでいる
- 飲酒量が増える
- 家事ができない(部屋が汚れるようになった)
- 楽しみにしていたことをやらなくなった
持病にあわせた薬治療が必要
高齢者は肝機能が低下していることから、薬の副作用が出やすくなっています。
また、高齢者の場合、他の持病を抱えている人が多いため、治療のために飲んでいる薬との相性をよく考慮しなければいけません。
うつ病治療中でも、できることを奪わない
高齢者も、自分でできることは自分でやりたいものです。周囲の人は良かれと思っても、そういった本人が「やりたい」と思っていることを奪うことは、生活に必要な能力や意欲の低下を招きます。
ときどき様子をみて、できないことをサポートするくらいのつもりでいましょう。
まとめ
家族がうつ病になると、いままで知っていた姿と違うように見えて戸惑うことも多いです。
しかし、そういう変化は病気のせいです。病気が良くなれば、もとに戻るものなので決してその人の人格がおかしくなったわけではありません。
うつ病も、その人の一部だと思って、理解を示すことでおたがいに安心感を得られます。
あせらず、家族そろって病気に向かい合っていきましょう。
- 変化は病気のせい
- うつ病の人の考えに否定的な対応は控える
- 励まさない/無理させない
- 家族もいっしょに生活習慣の改善をする
- 薬の管理を家族がする
- やりたくないことは無理しない